その他競争的資金獲得実績 - 西山 賢一
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微量膜成分のクロストークによる生体膜形成機構の解明
全学経費(学長裁量経費を除く)
資金支給期間 :
1900年-継続中研究内容 :
リン脂質で形成した人工的膜小胞であるリポソームは、生体膜由来の膜小胞に比べて化学物質に対する耐性度や物理的強度が極度に低下している。そのため、生体膜では膜を保護する物質が存在すると考え、申請者らは大腸菌内膜から生体膜保護因子(BPF; biomembrane-protecting factor)を同定した。本研究では、BPFの構造を含む諸性質を明らかにすることを目的とする。
申請者はこれまでタンパク質膜挿入の再構成系を確立し、無秩序な自発的膜挿入はジアシルグリセロール(DAG)やコレステロールによりブロックされること、タンパク質膜挿入は申請者が発見した糖脂質酵素MPIase(Membrane Protein Integrase)により触媒されることを報告した。BPFは分子量1~3 kDaの両親媒性の物質であり、リン脂質量に対して0.5~1%の微量脂質である。MPIase(~7 kDa)やDAGの発現量もリン脂質量の1%前後である。最近、MPIaseは膜内でのDAGの作用を制御して膜挿入を触媒することを示した。これらの作用にBPFがどのようなクロストークを示すのかを明らかにする。 -
TATタンパク質膜透過の分子機構解明に基づく異種タンパク質分泌生産システムの開発
全学経費(学長裁量経費を除く)
資金支給期間 :
2016年08月-2017年03月研究内容 :
TAT(Twin-Arginine Translocation)タンパク質膜透過経路(以下「TAT経路」)は、一般的なタンパク質分泌経路とは異なり、高次構造を形成したタンパク質の生体膜透過に特化した経路である。この特質を利用すれば、分泌タンパク質以外のタンパク質でも細胞外に大量に分泌生産させることが可能である。本研究では、TAT膜透過経路の分子機構を解明し、効率がよく汎用的なタンパク質分泌生産システムを開発することを目的とする。
TAT経路で膜透過するタンパク質は、「RRモチーフ」をもつ専用のシグナル配列が付加した前駆体として合成され、TatABCからなるTAT膜透過装置を介して膜透過する。TAT経路は植物やバクテリアに広く保存されており、1990年代後半以降多くの研究の蓄積があり、膜透過に関わる遺伝子の同定も進んでいる。しかし、未だに精製TatABC等を用いたTAT経路の膜透過の再構成に成功したという報告がない。応用的にも、異種タンパク質にTATシグナルを人工的に付加して大量分泌生産に成功した例はあるが、汎用的に分泌生産が可能な状況ではない。西山らはタンパク質膜透過・膜挿入に関与する「糖脂質酵素」MPIaseを発見し、構造・機能解析を進めてきた。その結果、MPIaseは単独(Nat Commun 2012)で、あるいはSecYEG(PNAS 2013)やYidC(Nature 2014)と相互作用して機能することが明らかとなった。これらの結果は、MPIaseは特異的な因子とのみ相互作用するのではなく、タンパク質膜透過・膜挿入全般に関与することを示唆している。これまでTAT経路の再構成に成功せず、汎用的にタンパク質分泌生産が困難である大きな理由はMPIaseが不足しているためであると考えられる。本研究では、まずTatABCとMPIaseを組み合わせてTAT経路の完全再構成を目指す。その再構成系を用いてTAT経路の膜透過機構を明らかにし、その知見を効率のよいタンパク質分泌生産システムの構築に利用する。
西山らは精製TatABCやMPIase標品を用いてTAT経路の再構成系を確立する。山田らはMPIaseを過剰生産し、TatABCの改良を行うことにより効率のよいタンパク質分泌生産システムを構築する。山田らが最近同定したアルコール酸化酵素は、2個の因子からなるサブユニ -
タンパク質膜挿入に関わる糖脂質酵素MPIaseの作用原理の解明とその応用
財団等からの助成金
資金支給期間 :
2015年06月-継続中研究内容 :
タンパク質膜挿入に関わる糖脂質酵素MPIaseの作用原理の解明とその応用
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タンパク質膜挿入に必須の糖脂質酵素MPIaseの作用原理解明とその応用
長瀬科学技術振興財団研究助成金
資金支給期間 :
2013年04月-2014年03月研究内容 :
膜タンパク質は疎水的な膜貫通領域をもつため、その生合成に共役して膜挿入する。膜挿入反応に関与する因子がいくつか知られているが、申請者が発見したMPIase (membrane protein integrase) は大腸菌におけるタンパク質膜挿入に必須の糖脂質である(Biochem Biophys Res Commun, 2010; Nat Commun, 2012)。MPIaseは膜挿入反応を触媒するという点で酵素様の働きをするため、MPIaseは糖脂質酵素(Glycolipoyme)であるという概念を提唱した(Nat Commun, 2012)。MPIaseの構造機能解析を予備的に進めたところ、MPIaseは膜上でまず膜タンパク質と水溶性の複合体を形成し、その後膜挿入反応が進行することが判明した。本研究では、MPIaseが膜挿入反応を触媒する分子機構をさらに詳細に明らかにすることを目的とする。また、MPIaseが汎用的な膜タンパク質可溶化剤として応用できるかどうか検討する。
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タンパク質膜挿入反応に必須の糖脂質酵素MPIase(Membrane Protein Integrase)の構造機能解析とその応用
全学経費(学長裁量経費を除く)
資金支給期間 :
2012年06月-2014年03月研究内容 :
生体膜を貫通する膜内在性タンパク質(膜タンパク質)は、その強い疎水性のため、タンパク質生合成に共役して膜に挿入する。タンパク質膜挿入機構は、生物種、オルガネラ種において多少の多様性が認められるものの、その基本的な部分ではすべての生物において共通である。申請者らは、タンパク質膜挿入反応を、精製された因子のみから試験管内で再構成することに世界に先駆けて成功した。その結果、タンパク質膜挿入反応には、既知のタンパク質性の因子だけでなく、新規複合糖脂質酵素MPIase(Membrane Protein Integrase、図1)が必須であることを発見した。MPIaseはモデル生物大腸菌を用いて発見された因子であるが、すでにHela細胞ミトコンドリア画分にもMPIaseと同様の活性が検出できることを明らかにしており、高等動植物においてもMPIaseホモログが存在する可能性は極めて高い。
MPIaseに関する研究は、「糖脂質酵素(Glycolipozyme)」という新たな概念を提唱した点で分子細胞生物学的に大きな意義をもっているだけでなく、機能未知の膜タンパク質の精製・機能解析といった新薬開発の基本的ツールの開発や、低温耐性作物の開発など、多くの応用的可能性を含有している。本研究では、まず大腸菌においてMPIaseの構造機能解析を完成させ、その知見を基に動植物MPIaseホモログの同定や変異体作製などを進める。これらを踏まえて「岩手大学ブランド」としてMPIaseの応用の可能性を探る。 -
タンパク質膜挿入・膜透過に関与する新規糖脂質の生合成経路の決定
野田産研研究助成
資金支給期間 :
2011年04月-2012年03月研究内容 :
タンパク質の膜挿入や膜透過の機構は大腸菌から高等生物まで基本的に保存されており、その分子機構の解明は細胞生物学的に最も重要な課題の一つである。また、膜の流動性が低下する低温下では、膜挿入・膜透過反応は特に強く影響を受ける。申請者らはin vivoの反応を忠実に反映した膜挿入・膜透過の再構成系を確立し、既知のタンパク質性因子だけでなく新奇複合糖脂質、MPIase(Membrane Protein Integrase)が必須であることを発見し、その構造を決定した(図1)。本研究では、MPIase生合成経路の全容を明らかにする。それらの生合成因子は抗生物質の新たな標的になるだけでなく、高分泌菌、高膜タンパク質生産菌の開発につながる。さらには植物MPIaseホモログの同定も可能になり、低温耐性植物の開発にもつながる。